徹底検証!キャンプの焚き火の薪に適した木の種類【針葉樹&広葉樹実験】

徹底検証!キャンプの焚き火の薪に適した木の種類【針葉樹&広葉樹実験】

そろそろ寒くなってきましたね。

キャンプでの暖を取る方法はいろいろありますが、やはり一番に思いつくのは「焚火」でしょう。

私も焚火は大好きなのですが、焚火にこだわり始めると、まずは “薪の木の種類” に着目するようになります。
今回は、キャンプに向いている “薪の木” について、さまざまな検証を交えながら解説したいと思います。

焚火に使う薪は大きくわけて2つある

針葉樹と広葉樹

焚火に使う薪は大きく分けて2つあります。
一つは「針葉樹の薪」、もう一つは「広葉樹の薪」です。

針葉樹の薪は、スギ、ヒノキなどが該当します。だいたいキャンプ場に売っているのは針葉樹の薪です。
針葉樹の薪は火が付きやすいのですが、その代わりに、燃え尽きるのは早いため薪の消費量が多くなります。

広葉樹の薪は、ナラ、クヌギ、カシ、サクラなどが該当します。主に薪ストーブを取り扱う店に置いています。
広葉樹の薪は、火はなかなかつきませんが、一度着いてしまえばゆっくりと燃えるので、火持ちがとても良いのが特徴です。

一般的には、「暖を取り続ける」という観点では広葉樹の薪が適しているといわれています。

ただ「キャンプで暖を取る」という観点では、私は必ずしも広葉樹の薪が最適だとは思いません。その理由についてご紹介したいと思います。

理由①広葉樹の薪は割りにくい

焚火をするには、薪を焚火に適した大きさに割らなければいけませんが、この “薪割り” において、針葉樹と広葉樹では決定的な差が存在します。

というわけで、実際に薪割りをしてみましょう!

薪割りにはハスクバーナの38㎝手斧を使います。
ハスクバーナの38㎝手斧

このハスクバーナの38㎝手斧は値段が安いのに、割裂く力は抜群です。

抜群すぎて、先日のキャンプでは薪割中に人差し指の先端を5mmほど切断して大出血してしまいました^^;
ただ、切れ味が抜群なので、医師も感心するほど綺麗にスッパリと切れていて治るのがとても早かったです。

抜群の切れ味ゆえに扱いには注意が必要ですが、このサイズの斧としては文句のつけようがなく超オススメです。

このとんでもないポテンシャルを持つ斧を使い、まずは針葉樹のスギの薪を割っていきます。
スギの薪を割る

斧の刃先を薪につけ、トントンと薪ごと地面に叩いてやります。安全のため革手袋をしっかりとしましょう。
スギの薪を割る2

針葉樹のスギの薪は2回軽く叩いてやるだけで、「割る」というより「裂く」ような感じでスーッと切れ込みが入っていきます。
あとは薪を食いこませた斧を地面に叩きつけます。一発で綺麗に割れました。これなら何本でも割れそうです。

続いて、カシを割ってみます。
カシの薪を割る

簡易的な薪割台に叩きつけたくらいでは全く斧が食い込みません…仕方がないので、コンクリに6回ほど叩きつけるとようやく斧が食い込みました。
カシの薪に食い込み

しかし、これ以上割裂くことはできなさそうです、、木の繊維同士が全然離れてくれません。
樫の薪が硬い様子

多分、もっと長い柄の斧を使えば割ることはできると思います。
たとえば、グレンデフォッシュのカーペンター465なんて薪ストーブ専用ですから、ハスクバーナの手斧より割りやすいと思います。

ですがカーペンター465は全長が55㎝もあるため、キャンプに持ち出すにはちょっと大きすぎます。車でのキャンプでギリギリの大きさでしょう。

となると、やはりハスクバーナの38㎝手斧が現実的なところだと思いますが、この斧で割れる範囲となると、やはり広葉樹より針葉樹のほうが良さそうです。

理由②広葉樹の薪は火口が作りづらい

焚火の着火にはさまざまな方法があります。

一般的にはジェル燃料や固形燃料を使う方法、麻などを使う方法が良く知られていますが、ナイフか手斧一本あればできる火口として「フェザースティック」というものがあります。

フェザースティックとは “厚目のカンナくず” のようなもので、ナイフや斧を薪に対して10°くらいの角度で当て、薪の表面をカンナのように削って作ります。ちょうど鳥の羽のような形をしているので、こうと呼ばれています。

ということで、私のキャンプには欠かせない相棒「モーラナイフヘビーデューティー」というナイフでフェザースティックを作っていきたいと思います。
モーラナイフヘビーデューティー

まずはスギでフェザースティックを作ってみます。
スギの木でフェザースティック

スギにナイフを当てて体重をかけると、スッと切れ込みが入り、薄くクルクルと木の表面を削り取ることができます。女の私の力でもすぐに削り取れるので、太さも薄さも自由自在です。
スギの木でフェザースティック02

針葉樹のスギだと、アッという間にフェザースティックができました。

次は広葉樹のカシでフェザースティックを作ってみます。
樫でフェザースティック

硬いカシは申し訳程度に表面が薄く削れるだけで、全く刃が食い込みません。
体重をかけてみましたが、厚みは全く変わりませんでした。

先ほどのスギと同じ回数だけやりましたが、カシではこれだけしか作れませんでした。

正直、これを何本も作る気にはなれません。

理由③広葉樹の薪は扱いが難しすぎる

私は今回の検証のため、スギを5キロ298円で、カシは6キロで698円で買いまいした(どちらもホームセンターで買いました)。

私の体感ですが、だいたいスギは5キロもあれば1,5回分ぐらいの薪になると思います。
対してカシは6キロもあれば2,5回分ぐらいの薪になるでしょうか。

薪の数と燃焼時間で考えればカシのほうが安いので経済的と言えるかもしれませんが、いかんせんカシは非常に火付きが悪いです。

乾いたものなら良いのですが、ホームセンター等で安く仕入れてくると乾燥が十分されていないものも少なくありません。それだともう最悪です。ただの文鎮と化します。

対してスギは多少湿っていても燃えてくれます。

たしかにスギが火持ちが良いとは言えませんが、その辺は薪の組み方を見直したり、薪をくべる速度を遅くしたりすればなんとでも調整できます。

ですが、火がつかないのだけはどうしようもありません。着火剤でブーストをかけつつ祈るしかありません。

そこまでして焚火に命をかけたところで、どうせキャンプの間しか火は使いません。

北国で薪ストーブを常時焚き続ける場合は「火持ち」「コスト」が重要になってきますが、短い時間しか使わないキャンプの薪においては、そこまで「火持ち」は重視しなくても良いと思います。

私には、キャンプギアを選ぶうえでそこそこに何にでも扱いやすいものは役に立つことが多いが、抜群にそれだけに特化したものを選ぶと失敗するという経験則があります。

その経験則は薪にも当てはまります。「火持ちは抜群だけど絶望的に火付きが悪い」というピーキーすぎる広葉樹の薪より、「火持ちはそこそこだが。火付きがよく扱いやすい」という針葉樹の薪のほうがキャンプでは有用だと思います。

広葉樹の薪が一概に全て「悪い」わけではない

これまで解説した通り、広葉樹の薪には

  1. 元々の火付きが死ぬほど悪いうえにフェザースティックも作りにくいので、着火がしにくく扱いづらい
  2. 全然割れない
  3. その代わり火持ちが抜群に良い

という特徴があります。

ですから広葉樹だけの薪、針葉樹だけの薪、どちらかを選べと言われたら、私なら間違いなく後者を選びます。

しかし、一概に広葉樹の薪が悪いわけでもありません。なぜならこれまで解説してきた通り、広葉樹の薪は火持ちが抜群に良いからです。

ですから「本当に理想的なキャンプの薪を用意しろ」と言われたら、それは “針葉樹と広葉樹のミックス” になると思います。

まずは火付きの良い針葉樹である程度の火力を確保し、火が安定してきたら広葉樹の薪を入れてその火をじっくり持たせるのが理想でしょう。
その場合の針葉樹と広葉樹の比率は、針葉樹7割、広葉樹3割くらいが良いと思います。

もし荷物の量や移動手段的に、針葉樹と広葉樹のミックスが許されるなら是非試してください。

ただ、荷物を少なくしたいキャンプ、特に私のようなバイクキャンパーなら、やはり薪は針葉樹の方が何かと都合が良くベターだと思います。

焚火は本当に奥が深いです。同じ広葉樹の薪であっても、ナラ、クヌギ、サクラで煙の香りが全く違います。
今回、針葉樹と広葉樹でいろいろと検証しましが、これは焚火のほんの入り口でしかありません。

今年の冬はいろんな薪で焚火をして、その深淵を少しだけ覗いてみませんか?