VARGOのウッドストーブって本当にULキャンプにおすすめ?実際に検証してみた

皆さん、UL(ウルトラライト)キャンプって知っていますか?
ULキャンプとは、「装備をなるべく軽く小さく」「最低限の荷物で」をモットーに行うキャンプのことです。
最近だと、自転車で日本一周をキャンプして回るようなサイクリスト、バックパッカー、ハイキングを楽しむ人たちに支持されているキャンプスタイルになります。
ULキャンプでは「1gでも軽いものが良いものだ」とされており、そんなULキャンパーやULハイカーに人気な素材が軽量の「チタン」です。
チタンという金属は大変優秀で、金属としてはとにかく軽く、丈夫です。硬さから見るとさほど硬いわけでもないのですが、とにかく粘りが強いため、多少グニャッと曲げたくらいではすぐに元に戻ります。多少雑に扱っても壊れません。
また、熱を加えると非常に美しい色になるという特徴もあります。
実際にチタンの色の変化を実験してみました。
左の画像がチタン素材のシェラカップ、右の画像がステンレス素材のシェラカップです。
シリコンオフ(※表面の脂を取り除く薬品)を噴いて丁寧に脱脂した後、バーナーでわざと空焚きして焼き色を入れてみました。
チタンは加熱すると酸化被膜ができ、画像のような綺麗なブルーに染まっています。ステンレスも多少は青い酸化被膜ができなくはないのですが、画像の通りまだらになってしまい、どちらかといえば赤っぽくなってしまうことが多いですね。
ULを至上とする人たちは持っていける装備が限られているため、一つ一つの装備を慎重に吟味します。「機能美」という言葉があるように、機能的であることと美しいことは切っても切れない関係にあります。ですからUL至上主義の人にとって、チタンは「丈夫」「軽い」「美しい」の3拍子が揃った素晴らしい素材ということになりますね。
ULキャンプには欠かせないチタンのギアの中でも、特に支持を集めている製品があります。
それが私も愛用中で、今回徹底レポートするVARGOの「チタニウムヘキサゴンウッドストーブ」です。
VARGOのチタニウムヘキサゴンウッドストーブは “小枝を燃やして焚火ができる” というチタン製折り畳みストーブになります。
折りたたむとこんなにも薄くペラッペラになります。
ULキャンパー・ULハイカーの間では絶大な人気を誇り、2018年11月13日時点でAmazonのレビューはレビュー数258で驚異の星4つという高評価を獲得しています。
でも、こんなに小さいものが本当に使い物になるのでしょうか?
今回はそんな疑問に答えるため、VARGOのチタニウムヘキサゴンウッドストーブが本当にULキャンプに向いているのかどうかを徹底検証していきたいと思います!
検証①本当に丈夫なのか?VARGOチタニウムヘキサゴンウッドストーブ強度検証
キャンプギアを選ぶにあたって重要な要素の一つが「堅牢性」です。たかだか数回使ったくらいで壊れるようなナイーブなギアは、ギアとしての信頼性に欠けます。
特に火を扱うギアは堅牢であることがとにかく重要です。
焚火から発せられる熱は意外とバカになりません。数千度の熱を長時間加え続けることになるわけですから、ちょっと熱を加えただけで歪むような代物はお呼びではないのです。
そして、こちらが我が家のVARGOチタニウムヘキサゴンウッドストーブになります。
9月くらいに買って、ほぼ晴れてる日は毎日これで小枝燃やして遊んでます。
それこそ長いときには半日以上燃やし続けて遊んでますから、かなりヘビーユースした方ではないでしょうか。
扉の合わせが若干ずれてますね、、これは熱変形によるものなのでしょうか?
購入当時にスマホで撮った写真と比較して確認してみました。
上の写真は買って1日目に、この中にアルコールストーブを入れて燃やした後の写真です。
この写真を見ると最初から少しずれてはいたようですが、今の方がずれが大きいようにも見えますね。
ただ…そりゃ、ほぼ毎日こんなふうに大炎上させて遊んでいれば、いくらチタンといえども歪みはでますよね^^;
たたんだ時はこのような感じです。
Amazonに掲載されている画像とさほど厚みは変わっていないように見えます。ということはチタンの板そのものが歪んだというより、恐らく板と板を繋げる留め金部分に歪みが生じ、扉がずれたといったところでしょうか?
熱が加わる以上、チタンであってもある程度の熱変形は避けられません。
とは言っても、一ヶ月間ほぼ休みなしで使用したとしても、VARGOチタニウムヘキサゴンウッドストーブなら使う上ではさほど問題ない程度の変形に収まるようです。
検証②本当に小さくて軽いのか?
我が家にある焚火台を引っ張り出して並べてみた
VARGOのチタニウムヘキサゴンウッドストーブは小さい小さいと言われてますが、具体的にどれくらい小さいのでしょうか?
私が所有する別のソロ用の焚火台を引っ張り出して比べてみました。
左から「ピコグリル398」、「B6カマドグリル」、そして一番右がヘキサゴンウッドストーブです。こう比べてみると分かりますが、やはりヘキサゴンウッドストーブの小ささは圧倒的ですね。
片手に乗せることもできます。これくらいのもので火が使えるって確かにロマンありますね。
たたんだ大きさでの比較はこのような感じになります。
ピコグリルはキャンプ場で買った薪をそのまま乗せるのを想定しての大きさなので、どうしても収納面積は大きくなりますね。
それにしてもヘキサゴンウッドストーブは小さいです。
ですが、真ん中のB6カマドグリルもなかなか良い小ささしてます。組み立て時はヘキサゴンウッドストーブよりも多くの燃料を入れられる大きさであり、たたんだ時はヘキサゴンウッドストーブより若干大きいくらいでしょうか。
たたんだ状態を横からみるとこのような感じです。
表面積を小さく抑えた分、B6カマドグリルはどうしても一番分厚くなりますね。
こうしてみるとピコグリル398の薄さが驚異的です。ステンレス板があえて最初からたわませたような形をしてるので、上から押しつぶすともっと薄くなります。
ヘキサゴンウッドストーブはこの2つの中間と言ったところでしょうか。
小ささという意味では、3つともどれも甲乙つけがたいといったところです。
重量で比較してみた
「どれも最高!」ではなんだか締まりがないので、重さを比較してみました。ただ我が家にはグラム計が無かったので、今回はカタログスペックでの比較になります。
ピコグリル398、B6カマドグリル、ヘキサゴンウッドストーブの重量比較※カタログスペック
圧倒的じゃないかヘキサゴンウッドストーブ……。
軽い軽いと言われているピコグリル398の半分もありません!さすがチタンですね!
ちなみにヘキサゴンウッドストーブにはチタン製の他にもステンレススチール製がありますが、そちらは227gあります。
もともとの大きさが小さいので、軽いチタン素材を使えばさらに軽くなるんですね。
他と比べてもヘキサゴンウッドストーブは正真正銘ULキャンプに適したギアだということが分かりました。
検証③本当にギアとして実用性があるのか?
キャンプギアには堅牢性が大切であることは先ほど述べました。ですが、もっと重要なことがあります。
それは「使えること」です。
キャンプ「ギア」なんです。ギア=道具なのですから、使えなければ始まりません。使えない道具はただのオブジェです。
そこで我が家の玄関先で小枝を実際に燃やし、お湯を沸かしてみました。
ULキャンプギアの検証ということで、火にかけるのはチタンシェラカップです。安定性が悪そうだったので、シェラカップの下にバーナーパッドを敷いてみました。
早速水200mlを沸騰させます。
ヘキサゴンウッドストーブは底に穴が開いているため、煙突効果で大変燃焼効率が良いです。そのため、沸かしている間も小枝の補充は忘れていけません。
シェラカップを火にかけて9分くらい経ったところで、もうもうと湯気が出始めました。
今か今かと15分くらい待ち続けましたが……
沸かねえ!!!
気泡はできるんですが、ちっともぶくぶくと沸騰しません。
実はチタンは非常に熱伝導率が悪いため、熱せられるとその部分だけ局所的に熱くなり、それ以外のところが全然温まらないという特性があります。
15分くらい待ってみましたが全く変化がないので、チタンシェラカップでお湯を沸かすことを断念しました。
ということで今度は熱伝導率が良く、満遍なく温めやすいアルミのクッカーに200mlの水を入れて加熱します。
ですが、15分待っても全然湧きません。
おかしいと思ってウッドストーブの中を見てみたら……
そりゃ沸きませんわ…完全に灰が溜まり、火が消えていました。
ウッドストーブをどかすと、その下には真っ白な灰がもりもりと溜まり、底の空気穴を完全に塞いでしまっていました。酸欠状態なら燃えないのも当然です。
お掃除をした後、再び枝を並べて火をつけます。
さきほどは着火剤を使って着火させましたが、今度は着火剤なしで試みます。ヘキサゴンウッドストーブの煙突効果を試してみたくなったのです。
枝を並べたあと着火し、扉を閉めてみます。
しっかりと燃えています。やはりヘキサゴンウッドストーブは煙突効果が起きやすい構造のようです。
なんだかんだあって、すっかり待ちくたびれた私は「早く結果を出したい」という一心で、せっかく温められた熱が逃げないように、アルミクッカーの上にシェラカップを被せました。
そして、待つこと9分。隙間から湯気が漏れ始めたので被せたシェラカップを取ってみました。
しっかりとお湯が波立って、ぶくぶくと沸騰しました!
ウッドストーブとチタン調理器具は意外と相性が良くない?
1つ、今回の検証実験から得た教訓があります。
ULキャンパーという生き物は、チタンギアが大好物なことが多く、チタンで揃えられるものは何でもかんでもチタンで揃えたがります。
ですが、あまり火力の安定しないウッドストーブでチタン調理器具を加熱すると、なかなか調理器具内の水・具材が温まりにくいという現象が起きます。
ついつい「チタン製のウッドストーブだから調理器具もチタン製で!」と安易にすべてをチタンで揃えたくなりますが、今回の検証のように非常に熱効率が悪くなってしまうため、ウッドストーブを用いるときは熱伝導率の良いアルミ製クッカーを選んだ方がよさそうです。
結局VARGOのチタンヘキサゴンウッドストーブはULキャンプに向いているのか
結論から言ってしまうと、VARGOチタンヘキサゴンウッドストーブはULキャンプに条件を限定すれば向いているでしょう。
ギアの軽さ、丈夫さ、コンパクトさから言えば、それはもうULキャンプに非常に向いています。
しかし、実用面に工夫が必要になります。
底に穴が開いているので、当然、燃えた灰は下に落ちます。どれくらい灰が落ちるかと言うと、これくらいです。
片手で軽く一握りくらいの量ですね。
ただ、写真のように灰を気にしなくても良いコンクリートの上で使うのなら良いのですが、土や草の上では注意する必要があります。
土や草の上でヘキサゴンウッドストーブを使うなら、百均で金属トレイを買ってくるか、アルミホイルを敷いたほうがいいでしょう。
ヘキサゴンウッドストーブ自体は非常にULキャンプギアとして優秀です。
ただ、これを使う条件を整えるために金属トレイやアルミホイルなどの追加の道具が必要になる場合もあることを考えると「ULといえるのかな……」と問いかけたくなってしまう気持ちも正直無くもありません。
まとめ
いかがだったでしょうか?
ULキャンプという面から見ると、ヘキサゴンウッドストーブには課題が少し残る結果とはなりました。
ですが、「薪をわざわざ買わなくても落ちている枝で焚火ができる」という手軽さは何物にも代えがたいです。
ULキャンプとしては使用法が限定されてしまう感があるのは否めませんが、庭先キャンプのお供にはこれ以上ない相棒となるのは間違いないでしょう!
-
前の記事
リードクライミングとは?ボルダリングと何が違う?東京2020までにしっかり予習しておこう! 2018.11.14
-
次の記事
沈む高比重PEラインのススメ[ボトムの釣り&バス&エギングにも最適] 2018.11.15